研修会
鉢植えのバラ 冬の仕事
2015.11.30(月)
東京都立園芸高等学校 講堂
講師:殿岡 知子氏
(東京都立園芸高等学校バラ園「翠のボランティア」代表)
今日は、冬の鉢植えのバラのお手入れについてお話したいと思います。バラの栽培は地植えでも鉢植えでも基本は同じですが、いくつか違いや気を付ける事があります。
鉢植えで大切な事は、育てる環境にあった土を作る事だと思います。
基本は、根を育てる為に、水持ちと水はけの加減をどうするかという事です。
バラは水が好きな植物で、極端な例ですが、インドの研究者のビル・ビララガバンさんに見せて頂いた写真では水に浸かった状態で花を咲かせていました。日本でもノイバラが川辺で咲いているのをよく見かけます。
水が好きな植物ですが、水浸しで根は育ちません。植物を育てる時、水やりは表面の土が乾いてからと言いますが、バラも同じです。私は、成長期に1日1回朝水やりをすれば良い状態の土にしたいと思い、赤玉の小粒6と腐葉土4を基本に土の調整をしています。
鉢植えのバラの育成に重要な、冬の植え替え、鉢増しや剪定を実践してみます。
バラ苗の植え替え
これまで育てたバラ苗の植え替えは、バラの休眠期の冬(12月~2月)に行います。
バラの成長度合いにもよりますが、8号鉢以上で2~3年に一度しています。
土が痩せるので、3年を超えて同じ土のままにしない方が良いと思います。
この作業により、新しい根が出てバラの成長が促進されます。
‐植え替えに必要なもの(基本)‐
・植え替えたいバラの鉢より一回り大きい鉢(私はベランダで鉢の重さが気になる為、プラ鉢を使用。)
・大きくしないものは同じサイズの鉢
・小粒の赤玉土 ・腐葉土 ・鉢底石(軽石又は大玉の赤玉土で代用。)
・ミリオン(珪酸白土と同じもの。根腐れ防止の為。)
・鉢底用ネット
・支柱
・麻ひも
・名札
・マルチング用のヤシがらマット又はバークチップ
・有機発酵肥料
‐試しても良いと思うもの‐
・ベラボン(ヤシがらチップで吸水性と撥水性に富む為、通気性があり、根張良くなります。私は一割程混ぜます。
軽い為、大きい鉢の場合、腐葉土の半分をべラボンに代えることもあります。)
・牛糞(腐葉土の代わりとして使用。)
・燻炭(燻炭は病害予防の為。土壌改良剤。)
‐植え替えの手順‐
①土の用意をします。
赤玉土6:腐葉土4にミリオンを少量混ぜます。
腐葉土の代わりに馬糞も使用できます。
②新しい鉢に鉢底ネットを敷き、鉢底石を入れます。
混ぜた土を3分の1程入れておきます。
③苗の準備をします。
上部3分の1位を目安に仮剪定します。根と上部を同じ位減らします。
バラ苗を鉢から出し、3分の1から半分程土を落とします。
巻いている根を解き、伸び過ぎた根や古くなった根も切ります。
④新しい鉢に植え付けます。
根を少し広げる様にして、②の上に苗を置き、
土を鉢の上部にウォースペースを残す様に入れ、割り箸で突きます。
支柱を添え、名前を付けておきます。
接ぎ木苗の場合は、接ぎ口は土の上に出る様にします。
⑤鉢の底から水が流れ出る位にたっぷり与えます。
⑥1週間程してから、固形の有機発酵肥料を鉢の縁に置きます。
置き肥は、1か月毎に前のものを捨てて取り替えます。
⑦ヤシがらマットを鉢植えの上に置きます。
⑧根が安定するまで風当りの強くないところで管理します。
購入した鉢苗の植え方、鉢増しの仕方
購入した鉢植えは根が張っている事が多いので、花つきのものは花後に剪定をして鉢増しをします。
鉢増しとは、接ぎ木や挿し木をした苗を成長に応じて大きい鉢に植え替えていく事で、バラの成長を促進します。これは1年中できます。
土の量が成長に影響を与える為、育てたい大きさの苗になるまで鉢を大きくしていきます。
‐鉢増しに必要なものと手順‐
植え替えの時と同じです。
‐留意点‐
成長期に鉢増しする時は、根鉢をあまり崩さない事と剪定も控えめにする事が大切です。又、新苗を鉢増しする時は、根鉢は崩さずそっと行います。
‐鉢増し後のバラの管理‐
鉢の土の表面が乾いたらタップリ水を与えます。(鉢底から水が出る位が目安。)
肥料は固形の有機発酵肥料を一か月に一度置き換えます。
冬の剪定
‐剪定の目的‐
バラの株の更新の為に必要な作業です。
枯れた枝や古い枝、ふところ枝、弱い枝を取り除き新しい元気な枝を残して、病害虫の元を断ち、春に形の良い樹形で良い花を咲かせる為に行います。
‐剪定の時期‐
12月下旬から2月上旬の休眠期
‐剪定の強度‐
鉢植えでも地植えでも剪定の基本は同じですが、鉢植えでは土の量に限りがあるので、鉢のサイズに応じた大きさになるように留意します。
私は、芽が早く動いた時などに後で切り戻す余地を残す為、甘めに剪定します。
〇ハイブリッド・ティーは一番強く剪定します(1/2~1/3残す)。
〇フロリバンダはそれよりも弱めに剪定します(2/3位残す)。
〇イングリッシュ・ローズは、フロリバンダと同じ性質のもの、
ブッシュタイプ、つるバラタイプと性質が違うものがあるので、
その性質に応じて剪定する。
〇オールド・ローズと言われるものも多種多様ですが、
細い枝も残す弱剪定が一般的。
春のバラの準備
2月中旬から下旬の春が来る前、剪定の後、芽が動く前に、8倍に薄めた石灰硫黄合をバラ全体に塗ります。散布でも良いですが、フェンスなどにつくと錆びるので、塗っています。
残っている葉は取り除きます。
3月に入ったら芽出し肥として、化成肥料を与えます。又、ハイポネックス等の液肥(1000倍)を週一回与えます。
3月下旬に、虫害を防ぐため、オルトランの粒剤を根元に撒きます。